河北潟にすむ鳥
河北潟は石川県を代表する鳥の生息地(せいそくち)です。今まで記録された鳥は230種類をこえますが、この内の130種類あまりが水鳥です。カイツブリ、サギ、カモ、シギ、チドリ、カモメなどの鳥が、県内でもっとも多く見られる場所と言えるでしょう。
そんな河北潟の中でも水鳥が多いのは水辺(みずべ)の植物が多い所、ヨシ原が広がる場所です。 冬、多くのカモ類はヨシ原の中にはいり、人間や外敵(がいてき)からかくれます。雨や風が強い時には避難(ひなん)する場所にもなります。またマコモの根などは食べ物にもなっています。 春から夏にかけては、カイツブリなどの鳥がこうした水辺のヨシ・ガマの草原の中に巣(す)を作って卵を産み、子育てを行います。巣を作る鳥の中には内灘町の鳥「タカ」のモデル、チュウヒもいます。変わった名前ですが、ヨシ原にすむタカの1種です。チュウヒが巣づくりをしている場所は全国的にも少なく、たいへん貴重(きちょう)です。河北潟を代表する鳥といってもよいでしょう
河北潟は防潮水門(ぼうちょうすいもん)ができて淡水(たんすい)(真水)化されてから水がよどみ、ずいぶん汚(よご)れてしまいましたが、カモをはじめ、鳥たちにはまだ大きな影響(えいきょう)は見られません。
しかしこれから汚れがもっと進むと、いなくなる水鳥が出てくるかもしれません。水質(すいしつ)をよくするこころみはもちろん必要ですが、鳥たちのすみかであり、食べ物となる昆虫や魚、植物などを育てる広いヨシ原などを守らなければ、水鳥を守ることはできません。
最近ではヨシ原には水を浄化(じょうか)する働きがあることもわかってきました。滋賀(しが)県では条例(県で作る決まり)を作って琵琶湖(びわこ)のヨシ原を守り、なくなった場所では人工的に復活(ふっかつ)させる努力までしています。そんな滋賀県の県鳥は水辺にすむカイツブリ。水辺の自然をたいせつにし、鳥のすみかを守ることが、水をきれいにすることにもつながるのです。
町の鳥チュウヒがいつまでも暮(く)らせる河北潟にしたいですね。
(著 竹田伸一氏)
河北潟にすむさかな
石川県にはおよそ80種類の淡水魚(たんすいぎょ)がくらしています。
ところで淡水魚とはどういう魚たちのことを言うのでしょう。
河北潟にはたくさんの川が流れ込んでいます。そして河北潟の水は大野川を通ってやがては日本海に流れ出して行きます。ですから河北潟には川の魚だけでなく、時には海から魚が入り込んでくることもあります。たとえばアユやウナギは季節によって、海と川の両方を生活の場としています。
これとは反対に一生を川や潟(かた)の中だけで生活している魚もあります。たとえばコイやフナ、メダカやナマズといった私たちがよく知っている魚たちです。このように生活のすべて、あるいはある期間を真水の中で生活する魚たちのグループを淡水魚と呼んでいるわけです。
ところで河北潟でもっとも
ふつうに見られる魚はなんでしょう?
つりが好きな人なら、コイ、フナ、バスなどと答えるかもしれません。石川県内の淡水魚を調べた資料を見てみると、河北潟では28種類の淡水魚が見つかっています。名前を調べたい人は表のリストを見てください。中にはみなさんがよく知っている種類もあると思いますが、聞きなれないものも多いと思います。一口に淡水魚といっても外国からきたものや、別の県から移されてきたものなど、さまざまな理由や過去を持ったものもいるわけです。
では河北潟の魚は近年どのように変わって来ているのでしょうか?
これはもうよく知られたことですが、ブルーギルなどの外国から来た種類がとてもふえてきたことです。それから、河北潟に防潮水門(ぼうちょうすいもん)ができたことで、海から潟の中に魚が入りにくくなったことです。その結果、シラウオやサケなども、最近ではすがたを見せなくなってしまいました。人間と動物たちがともに仲良くくらせる場所は、どうしたら取りもどせるのでしょうか?
(著 山本邦彦氏)
(表)河北潟の魚 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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※純淡水魚(じゅんたんすいぎょ):一生を淡水で生活する魚 ※回遊魚(かいゆうぎょ):海と川を行ったり来たりして生活する魚 ※汽水魚(きすいぎょ):海水と真水がまじりあう所で生活する魚 |
河北潟の植物 ホテイアオイ
ホテイアオイは、もともとアフリカ原産(げんさん)の水性植物(すいせいしょくぶつ)で、ホテイソウ、タイワンナギなどとも呼(よ)ばれています。河北潟ではここ数年、西部承水路(しょうすいろ)などを中心に夏から秋にかけて水路の水面を全部おおってしまうほどたくさん見られます。ふつうは水に浮かんで生活し、根は場合によっては1m以上にも長くなりますが、水の底の泥(どろ)に根を張って定着(ていちゃく)するようなことはありません。このように水に「浮かんだ」植物を総称(そうしょう)して「浮漂(ふひょう)植物」ともいいます。
ホテイアオイの特徴(とくちょう)は、なんと言ってもその「成長の速さ」です。水温や栄養分などの条件が良いと、信じられないようなスピードで成長・増殖(ぞうしょく)し、ポンプ場や水門があるとそれらを詰(つ)まらせたりします。
また、成長したホテイアオイが秋になって枯(か)れて腐(くさ)り、水を汚したり悪臭(あくしゅう)の原因になったりもします。このようなことから、ホテイアオイは「世界10大害草」や「緑の悪魔」などとも呼ばれ、熱帯(ねったい)や亜熱帯(あねったい)の国ではあまり評判(ひょうばん)の良い植物ではありません。
しかし、この「成長の速さ」を使って水をきれいにできないか、という試(こころ)みが世界のあちこちの国で行われています。ホテイアオイは自分を大きくしたり、仲間を増(ふ)やしたりするための栄養として、窒素(ちっそ)やリンといった物質(ぶっしつ)をたくさん吸収(きゅうしゅう)します。これらの物質は、わたしたちのふだんの生活、河北潟干拓地内の畑や牧場、また、その周辺(しゅうへん)の農地からもたくさん排出(はいしゅつ)され、河北潟に流れ込んできます。
これらの物質を上手(じょうず)にホテイアオイを使って吸収させることができれば、大変都合(つごう)が良いですね。ただ、うまくやらないと上にも書いたとおり、せっかく窒素やりんを吸収したホテイアオイが反対に河北潟を汚し、本当に「緑の悪魔」になってしまうかもしれません。
河北潟にはホテイアオイのほかに、ミズアオイやアサザといった水生植物も見られます。これらは全国的に見ても貴重なもので、ホテイアオイよりはきれいな水を好みます。河北潟の水を今よりきれいにしていきたいですね。
(著 沢野伸浩氏)